BIKE&WEAR
BICYCLE INN PARK と一緒に開催される、歴史あるサイクルロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」。ここに参加するプロ選手たちが着ているような体にフィットするサイクリングウエアを、僕たちは長年にわたって作っています。とは言っても、まだまだ自転車レースが盛んでない日本。レースを目にする機会よりも、このようなウエアを着てサイクリングを楽しむ、一般のサイクリストを見かけることの方が多いかもしれません。
彼らが着ている、このピタピタのウエア。ボディラインが強調され、自転車に興味のない人からすると着るのに(目にするのも?)かなり抵抗のあるウエアではないでしょうか。
どうしてこんなにタイトフィットなのかというと、大まかには「動きやすさ」と「空気抵抗を減らす」為なのですが、これがレースに出ないサイクリストでも感じられるくらいの効果がある。特にロードバイクに乗って速く長距離を移動したい、その移動自体を楽しみたいという時などは、圧倒的に快適なのです。問題は、その効果を天秤に掛けたくなるほど日常から乖離したこのルックスと、どう向き合うか...。ご近所さんからの視線も気になります(笑)。
ほとんどの場合、スピードや走行距離に関心が向いてくると、結局は「慣れ」によってこのピタピタのウエアを着る事になるのですが、僕たちとしてはウエアメーカーという立場で、ここでもう一歩、皆さんの意識を進めることができないかと思っています。
レースの外でサイクリングを楽しみ、街中などで社会と接点を持つならば、タイトな本気のサイクリングウエアも立派なファッションの一部といえるのではないでしょうか。
「外見は内面の最も外側」とはよく言ったもので、ファッションは時にそのデザイン性よりも、背景にあるカルチャーやストーリーによって、説得力や魅力が増すように思います。音楽とファッションの関係などを例にとるとイメージしやすいかもしれません。洋服を選び、スタイルを持って着こなす姿は、往々にして自己紹介と同じ機能を果たすことでしょう。とは言うものの、そのようなコミュニケーションが成立するのは、双方がメッセージを読み解く共通のキーワードをもっている時だけです。
これを僕たちが作っているサイクリングウエアに置き換えると、その源流としてのサイクルロードレースというスポーツを、双方が知っているか否かと言うことになります。そしてその印象がカッコいいものなら尚良い。
僕はロードレーサーでサイクリングを始めるのと同時に、レースを観ることにもハマった人で、ずっと飽きずに乗り続けられているのは、その「観る」面白さに拠るところが大きいのではないかと感じています。レース内外での人間模様が最大の魅力ですが、競技用の自転車に乗り、専用のウエアを身に纏って走る姿も実に格好いい。また、例えば表情をゆがめながら坂道を登る選手の姿が、(パワーこそ桁外れに違いますが)週末に近場の峠を登る自分と重なったりするのも、感情移入しやすくて面白いのです。
そんなふうに、スポーツバイクに乗る人には是非レースも観て、自転車への興味を更に深掘りして欲しいと思いますし、反対にレースを観ることをきっかけにスポーツバイクを楽しむ人が増えたりすれば、日本のサイクリングカルチャーに、もっと奥行きが出てくるのかなという気がしています。また、それが回りまわって日本の競技力が向上したり、世界で活躍できる選手の輩出に繋がっていくのなら、それこそメディアなどを通じて世間からの注目度も高まることでしょう。そうすれば街中のタイトなウエアも珍しいものではなくなるかもしれない、というのは話が飛躍しすぎでしょうか。
BICYCLE INN PARK と一緒に開催される「ツアー・オブ・ジャパン」は日本を代表するロードレースの一つで、これまでも多くのファンを魅了してきました。堺ステージも、もちろんその空気感を身近に感じることが出来る絶好の機会。僕たちも少しでも会場を盛り上げたい気持ちで東京から出展に参りますので、是非皆さんで一緒に楽しみましょう。
<おまけ>
写真は 2010 年のマイケル・マシューズ、当時 19 歳。TOJ 堺ステージにて。
今と変わらない 2.6km のタイムトライアルで圧勝。翌シーズンにはワールドチームに加入し、僕にとってはずっと「推し」の選手です。そして登れるスプリンターとして、いつかは勝ってほしいと思っている格式高いレースが「ミラノ〜サンレモ」。歳を重ねるにつれて「やはり難しいな...」と応援する僕自身が諦めムードだったここ数年ですが、あれから 14 年たった今年のレースでは、スプリントの結果、なんと僅差も僅差で 2 位!思わずテレビの前で頭を抱えました...。TOJ にはこんな楽しみがあります。